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INTERVIEW 2021.2.19

インタビュー 百年乃家ときえだ・時枝仁子さん

時枝夫妻が切り盛りする「百年乃家ときえだ」は、明治28年に建てられた築約130年の日本家屋。母屋と米蔵を丁寧に改修した、1日1組限定の農泊です。グリーンツーリズム発祥の地でもある安心院ですが、夫妻は1996年当時より受け入れ手として関わってきました。

「私は安心院で生まれて、安心院で育って、安心院に嫁ぎました。安心院でずっと生活するなかで、どうして安心院は湯布院や別府のように、賑わいや人の往来が少ないのだろうと、子どもの頃から思っていました。安心院って読み方も難しいし、誰も知らないし……心のどこかにコンプレックスのようなものがあったのだと思います。安心院にも人の往来ができて賑やかになったら私たちも楽しいはず。そんな気持ちが、歳を重ねるうちに大きくなっていったんです」

そんな仁子さんの漠然とした思いが実現するきっかけとなったのは、1996年。日本のグリーンツーリズムのパイオニアとして知られる宮田静一さんが、NPO法人安心院町グリーンツーリズム研究会を発足させたことでした。

「もしかしたら、今まで私が持ってきた思いと、これから自分がこの土地で生きていく上での夢が形になるんじゃないか。そう直感し、自分の人生をかけたいなと思いました」

とはいえ当時は、農村で暮らす女性が家庭や社会に向けて自ら声を発し自己主張するということは、まだまだ簡単ではなかったと振り返ります。

「私はまだ若嫁でしたので、家の経営に対して意見を言ったり何か提案するということは、なかなかできなかった。家長の言うことを、ただただ従順に聞いて暮らしを立てていました。お義父さんお義母さんにとってみれば、ごく普通の家に知らない人を泊めるなんて非常識な話。私も最初は、世間体、お客さんを迎え入れる不安、お金をいただくことへの不安など、いろんな不安がありました。それでも、やってみたいという気持ちの方が強かったんですね」

築130年になる「百年乃家ときえだ」は、昔ながらの造りだけに部屋数も多く、間取りやしつらえも情緒にあふれています。掃除や定期的な手入れには時間も手間もかかりますが、農村で純日本的な暮らしに触れたいと安心院にやってくる方々にとっては、驚きと感動の連続です。

「広いだけで、普段使わない部屋ばっかりだし便利が悪いんですよ。文化的な暮らしをしている方々にとっては不便だとは思うけど、世界から見れば日本的な暮らしはこういうかたちだと思います」

農泊を受け入れるようになって25年。時代の流れで農泊のあり方にも変化が求められていますが、仁子さんの思いはどこまでもまっすぐです。

「農村は、派手ではないけど人の思いやりや温かい食事など、昔からの良いものがたくさん残っています。安心院に来た人がこうしたものに触れることによって、心が和んで、気持ちが豊かになったと思ってもらえるような受け入れをしていきたいです。私たちがいくら背伸びしても、できないことはできない。だからありのままの生活、畑、農家としての暮らしを、お客さんがいてもいなくても常に整えておくことに気をつけています。そして、日本の素朴な日常の美しさを伝えられるといいなと思っています」

これからも農泊受け入れの先駆者として、みんなのお母さんとしてあり続ける仁子さんに会いに、ぜひ安心院へお越しください。

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